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    野村和也監督による放送終了イラストコメント

    白土晴一(チーフリサーチャー)によるコラム「ジョーカー・ゲームの裏の裏の裏」!

    >続きを見る 「ジョーカー・ゲームの裏の裏の裏」第1話・第2話

    第1話・第2話「ジョーカー・ゲーム」(前・後編)

    ジョーカー・ゲームをご視聴頂きましてありがとうございます。
     このコラムではアニメ「ジョーカー・ゲーム」で描かれるスパイの世界や疑問などを、ちょっとだけマニアックに書かせて頂こうかと思っております。
    ただし、こちらの文章は、私個人の解説、見解、主張となりますのでご了承ください。そうじゃなければ、世界の裏を生きるスパイの話はなかなか語れないものでして。
     さて、ジョーカー・ゲーム第1~2話を見て、「参謀本部の武藤大佐は、どうしてD機関を嫌うの?同じ陸軍なのに?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

    そもそも、陸軍参謀本部とは何でしょうか。
    軍隊という組織は近代になると大きく複雑なものになり、優れた指揮官であっても個人の力だけでは指揮することが難しくなります。そこで、多数の人間で作戦を立てたり、事前準備をしたりする、指揮官を助ける専門組織が作られます。つまり、軍師をたくさん集めてお役所にしたような存在、それが参謀本部とお考えください。
    こうした近代的な参謀本部は19世紀にプロイセンのヘルムート・フォン・モルトケという軍人の活躍によって知られるようになり、日本は明治期にこのプロイセンから直輸入されるような形で設置しました(当初は参謀局などの名称でしたが)。
    しかし、情報がなければ、どんな優秀な参謀本部があっても、作戦立案や事前準備をすることが出来ません。敵がどういう存在かを知らなければ、どうやって戦争の準備をすればいいのかも分からないのですから。
    そうなると参謀本部自体が、情報機関としての役割も持たなければならなくなります。

    ジョーカー・ゲームの物語が始まる昭和12年頃の編成ですと、日本陸軍の参謀本部には「参謀本部2部」という情報部門が存在し、帝国軍人である大使館附武官(公使館附武官もしくは武官補佐官)が世界各地に派遣され情報収集を行っていました。
    当時の日本陸軍の仮想敵国であったソビエト連邦を探るためには、ソ連本土だけではなく、ポーランド、ラトヴィア、フィンランド、イランなど、アメリカを探るためにはアメリカ本土だけではなく、メキシコやカナダなどに武官が駐在しています。
    駐在武官たちは表向きの外交儀礼や現地交流だけではなく、当然アンダーグランドのスパイ活動などにも関与しています。無論、直接武官自身が任務をこなすというよりは、現地のスパイを管理したり指揮したりすることが多いのですが。
    例えば、初代ポーランド公使館附武官であった山脇正隆大佐はユゼフ・ピウスツキを首班とするポーランド共和国の独立に関与した経歴を持ち、ヨーロッパにおける日本陸軍の情報活動に重要だったポーランドとの協力体制構築に成果を上げました。
    また、昭和11年にアフガニスタン公使館付陸軍武官となった宮崎義一少佐などは、現地で諜報活動や扇動工作を行いましたが、イギリスとソ連の圧力で「ペルソナ・ノン・グラータ」(外交的に好ましくない人物)とされてしまったような事例もあります。(ちなみに、のちにアフガニスタンには身分を偽装した中野学校出身者が派遣されます)。
    こうした世界各地に派遣された駐在武官の活動は現実の歴史では無視できないものでしたが、彼らは基本的には参謀本部の武藤大佐のように士官学校や陸軍大学校を出たエリート軍人が任命されたもので、受け入れ国から外交的な身分を保証されて活動しています。公式な外交身分がある駐在武官ならば、スパイ行為を見つかっても、先述の宮崎義一少佐のように「ペルソナ・ノン・グラータ」とされて国外退去になるだけという可能性が高いでしょう。
    しかし、スパイの世界にはNOCという存在があります。
    Non Official Cover(ノン・オフィシャル・カバー)の略で、これは駐在武官のような公式な外交身分を持たず、一般人の身分を偽装し、敵国などに潜入し活動するスパイとなります。NOCは逮捕されれば、外交身分がないのでスパイとして裁かれ、死刑になる可能性も高いでしょう。
    このNOCという存在の方が、私たちのスパイのイメージに近いのではないでしょうか。当然ながら、NOCは外交身分を持った駐在武官とは違う方法論で情報収集を行わなければなりません。
    結城中佐が設立した「D機関」は、このNOCを養成するスパイ学校、しかも軍人ではなく一般大学出身者などから採用を行っています。

    こう考えると、武藤大佐が「D機関」を嫌う理由がちょっとは分かります。
    軍人の彼にしてみれば、すでに陸軍参謀本部には既に情報収集能力が十分あるし、機能していると信じ、新たな諜報組織である「D機関」など必要無いと考えているのかもしれません。その上、自分と同じような軍人教育を受けた駐在武官に比べ、「D機関」に集まる得体が知れない学生上りたちは、危なっかしく胡散臭い異質な存在と感じているでしょう。
    そうなると、「D機関など、さっさと潰してしまえ!」となってもおかしくありません。
     つまり、ジョーカー・ゲーム第1~2話は、参謀本部というすでに情報収集を行ってきた巨大組織と、それとはまったく違う性質と哲学を持った「D機関」という二つの諜報組織の抗争と言えるのかもしれません。

    >続きを見る 「ジョーカー・ゲームの裏の裏の裏」第3話

    第3話「誤算」

    第3話ではD機関がドイツ占領下のフランスで活動するストーリーが展開します。
    実際の日本陸軍もフランスで情報活動を行っておりますが、その歴史を振り返るとなかなか複雑なものがあります。これはロシアや中国といった周辺の国々に比べると、遠く離れたフランスの情報はそこまで優先度が高くないのですが、フランスという国家の重要性と他国との関係性を考えると無視は出来ないということがあるかと思います。
    そもそも日本陸軍は当初フランスの軍制に影響を受けていました。1870年の普仏戦争での結果からプロイセンの制度を取り入れるようになりましたが、1880年(明治13年)には当時少佐であった田島応親が初のフランス公使館附武官として派遣され、1902年(明治35年)の参謀本部1部丙班の分担などを見ても「独逸(ドイツ)軍制」などと並んで「仏蘭西(フランス)軍制」の調査の項目があり、留学や文献などを通してフランスの情報を収集しております。

    しかし、陸軍がより激しい情報戦をフランスで行うようになったのは、やはり日露戦争の前後でしょう。元々フランスはロシアとの結びつきが強く、1894年に露仏同盟が締結されています。 つまり、日露戦争は「日英同盟」の日本・イギリスと「露仏同盟」のロシア・フランスの戦争という側面もあったわけです。 フランスは日本と直接戦闘を行ったわけではありませんが、ロシアに様々な支援を行いました。日本にとっては、フランスの動きが日露戦争の戦闘に影響するのですから、おのずとフランスでの情報戦が活発化したというわけです。
    日露戦争の情報戦といいますとフィンランド独立運動やロシア国内の革命家などを支援した陸軍軍人・明石元ニ郎(当時は大佐)が有名ですが、当時のフランスの外務大臣テオフィル・デルカッセの著作などを読みますと、陸軍以外でもフランス公使やロシア大使を歴任した外交官本野一郎との激しい情報戦の記述があります。
    日露戦争後も、1917年にロシア革命が勃発しソビエト連邦が誕生し、多くのロシア人がフランスに亡命すると、ソ連を仮想敵国とする日本陸軍は、この亡命ロシア人のネットワークからソ連情報を得ようとフランスでの情報活動を行っています。

    こう考えると、日本陸軍のフランスでの情報活動は、初期はフランスの軍制調査などから始まり、対ロシア・対ソ連という側面が強くなっていったのが分かります。しかし、ジョーカー・ゲーム時代設定の1940年ごろになると、陸軍はフランスの植民地であった仏領インドシナ(仏印)の情報を重視するようになります。
    例えば、昭和の陸軍には、土橋勇逸というフランスの専門家と言える軍人がおりました。 東京外語大で陸軍委託学生としてフランス語を学び、フランス駐在などを経て、フランス大使館附武官になるという経歴の持ち主ですが、ジョーカー・ゲーム第3話「誤算」で描かれたように、1940年ドイツによってパリが陥落してフランスにヴィシー政権(ドイツと休戦協定を結んだ親ドイツ政権)が成立すると、仏領インドシナで援蒋物資ルート(中国を支援する物資ルート)を監視する日本陸軍の「西原機関」設置や仏印侵攻などに関与するようになります。
    つまり、日本陸軍のフランスに関する情報活動は1940年前後だと、仏領インドシナ関連にシフトしていきます。日本は物資供給の代わりに、フランスのインドシナ植民地政府を認めていましたが、フランス本国ヴィシー政権次第の状況次第でどうなるかは分かりませんでした。
    そうなると、フランス国内のレジスタンスに関する情報も必要で、第3話でD機関がフランスで活動する理由が十分にあったわけです。もちろん、結城中佐は仏領インドシナの利権よりも深い視点に立って動いていたかもしれませんが。
    ちなみに、原作「ジョーカー・ゲーム」シリーズの第2弾「ダブル・ジョーカー」にも「仏印作戦」に関するストーリーがございますので、ご興味がある方は是非に!

    >続きを見る 「ジョーカー・ゲームの裏の裏の裏」第4話

    第4話「魔都」

    第4話「魔都」でD機関が暗躍するのは、昭和16年の上海です。
    当時の小説などでも上海はスパイや犯罪が蠢くというイメージで描かれますが、実際に政治的にも経済的にも文化的にもかなり混沌とした街だったのは間違いありません。
    当時の上海の混沌さを生み出しているのが、イギリスやアメリカ、日本などの列強が共同で管理する「共同租界」、フランスが管理する「フランス租界」の存在です。
    「租界」は簡単に言えば外国人居留地なのですが、事実上の外国によって支配された植民地と言えます。中国側の上海市政府も手を出せず、「共同租界」は列強各国の代表で組織された「工部局」が行政組織、つまり役所の代わりとなり、「工部局警察」が犯罪を取り締まるというかなりの独立した自治が行われていました(フランス租界にも同様な「公董局」という組織がありました)。
    4話Aパートで登場するジェームズ警部やインド人警官は、この租界の「工部局警察」に所属しているという設定です。「工部局警察」には日本人警官も所属していたのですが、その実権はイギリス人に握られていました。
    中国側にとっては屈辱的と言える上海租界ですが、経済・文化的には東アジア有数の繁栄を誇っており、分断された政治体制で警察力が限定的であったため、犯罪者だけではなく、当局に追われた政治的亡命者、活動家なども多数居住していました。 例を上げれば、中国共産党は大正十二年にフランス租界で結党されていますし、アジア各国の独立運動の闘士なども上海を拠点とする場合が多かったようです。
    そういう街に情報が集まるのは当然で、上海の重要性は日本の憲兵隊も気付いていました。
    昭和2年に憲兵の間瀬勘八大尉が初めて上海に派遣され、その二年後の昭和4年にも憲兵司令部附きの横山憲三大尉が第二回派遣憲兵として、現地で反日抗日情報やソ連や共産党の情報収集を行いました。
    ただし、彼らは憲兵の身分を表に出さず、目立たないように髪を伸ばして私服で行動してはいましたが、D機関のような身分を偽ったスパイ活動はせず、領事館発行の身分証を持ち、外交的にトラブルを起こさないように配慮した安全第一の情報収集活動だったようです(それでも危険はありますが)。
    しかし、昭和7年に第一次上海事変が発生した後は、河村愛三大尉と下士官四名が現地に派遣憲兵隊事務所を開設、現地領事館の駐在武官などと協力しスパイ網の構築などを始め、日本の憲兵が上海にいることが半ば公然となると、徐々に危険度が増していきます。
    その後、第二次上海事変や日中戦争などを経て、上海憲兵隊が増強され、市内の治安維持、工部局との折衝、抗日テロ対策などの任務も担うようになると、上海の日本憲兵たちの危険度もうなぎ上りとなっていきます。
    昭和12年には、租界憲兵分隊の他に滬西地区に憲兵滬西分隊が作られます。 第4話に登場する及川大尉や本間軍曹が所属する分隊ですが、この地区は憲兵にとっては、かなり危険な場所でした。
    上海西側の滬西地区は本来租界ではなかったのですが、工部局が強引に租界の外に建設した「越界築路」という道路沿いの地区で、工部局の行政サービスが提供されていました。中国側にとってはなし崩しで拡張された主権侵害の地区で、ただでさえ政治が入り組んでいる上海で、最も中国と列強各国の利害対立が先鋭化した場所だったのです。
    こう考えると、及川大尉が現地で長い期間ストレスにさらされたのも理解できます。そして、そんな場所に要注意人物の憲兵を配置しておくのは危険なことも分かります。
     魔王と呼ばれる結城中佐の考えをすべて推し量ることはできませんが、この一触即発の滬西地区から要注意人物を密かに排除し、長くから上海で活動してきた憲兵隊の面子を潰さずに恩を売ることで、D機関の活動をスムーズにしたのですから、その手腕は見事というほかないでしょう。

    >続きを見る 「ジョーカー・ゲームの裏の裏の裏」第5話

    第5話「ロビンソン」

    「ジョーカー・ゲーム」第5話「ロビンソン」は、ほぼ尋問のストーリーが展開すると言って良いでしょう。
    尋問は情報活動にとって極めて重要です。身も蓋もない話ですが、戦時では優れたスパイよりも、相手から情報を巧みに引き出す優秀な尋問官の方が価値は高いかもしれません。歴史を見れば、尋問で得た情報で勝敗が決した例も数多くあります。
    尋問というと殴る、蹴る、水責めするなどの拷問をイメージする方もいらっしゃると思います。しかし、イギリスの尋問エキパートたちの中には、拷問はあまり有効ではないと考える者も多かったようです。
    第二次大戦中にドイツ・スパイの尋問施設「キャンプ020」を率い、「Tin Eye」(ブリキの目)の異名を持つロビン・スティーブンス中佐はその筆頭です。拷問で無理やり引き出した情報は精度が低いとし、暴力をタブー視しました。拷問で無理やり引き出した情報は苦し紛れの虚偽が多くて、実際に活用するにはリスクが大きいということでしょう。 もちろん、第二次大戦時のイギリスに拷問がなかったというわけではありません。同じくイギリス軍で戦争捕虜を担当したMI19のアレキサンダー・スコットランド中佐が運営した尋問施設「ロンドン・ケージ」では、度々捕虜となったドイツ人に対して拷問が行われたという疑惑があります。
    スコットランド中佐は自ら書いた本の中では拷問を否定しているのですが、赤十字の実態調査の拒否や長時間眠らせないなどの拷問を受けたドイツ人捕虜の証言などを考えると、それを素直に信じることは出来ません。スティーブンス中佐が、同僚である筈のスコットランド中佐のやり方をひどく嫌っていたという逸話もあるくらいです。
    第5話で登場するマークス中佐は、この対照的な二人のイギリスの尋問エキスパートで言えば、スコットランド中佐に近い部類でしょうか。もちろん、マークス中佐は単純な拷問などは使ってきませんし、巧みな心理戦を仕掛けていますが、ここぞという場面で自白剤を投与するなど、相当に冷徹な判断をしていますから。
    こうした拷問が尋問で頻繁に行われるのは、ある程度単純な方法だからでしょう。
    丁寧な尋問を行い、重要な情報を引き出す尋問官には、相手の心理を読む能力だけではなく、もっと基礎的な海外の文化に通じた語学能力なども必要となります。
    しかし、そうした語学能力のある人材がそうそういるわけもありません。情報活動はその国民の語学能力に左右される側面があり、広大な植民地と植民地官僚を有していたイギリスは尋問官に適した人材の獲得が他国に比べて有利ではありましたが、それでも十分とは言えなかったのでしょう。拷問はそうした能力の足りなさを埋め合わせてくれるという考えがある限り、無くならないといえます。 本当に拷問が尋問に有効かどうかは分かりませんが。
    日本に関しては、こうした対外情報に強い尋問官を養成するには大きなハンデがありました。当時の日本では語学力のある人材が限られており、その人材の少なさゆえに、日本軍は外国人に対して有効な組織的尋問体制を築くことが出来ませんでした。
    ただし、例外もあります。
    日本陸軍で一貫して対ソ連情報を担っていたハルピン特務機関(1940年からは関東軍情報部)の軍事情報班(軍情班)は、ロシア語に優れた通訳官などを少数精鋭で配置し、国境を越えて満洲に逃亡してくるソ連兵の尋問などを行いました。特に昭和17年末から独ソ戦でソ連側の不利が続くと逃亡ソ連兵が急増し、彼らへの尋問から極東ソ連軍の編成や配置、要塞の内部や軍内部の情報を相当引き出すことに成功しています。それらをまとめた資料を見たことがあるのですが、かなり精緻な内容でした。
    D機関もそうなのですが、当時の日本ではこの軍情班のように数少ない人材を集中するしか、優れた情報機関を維持することが出来なかったのかもしれません。戦争が勃発し戦線が拡大すると、こうした少数精鋭の方法は通じなくなるのですが。
    ちなみにハルピン特務機関で尋問を受けた逃亡兵が実は偽装で、偽情報を掴ませられ、二重スパイになるふりをして、逆に日本軍やハルピン特務機関の内情をソ連側に伝えたケースもよくあったようです。ハルピン特務機関も、そうしたリスクを承知の上で、逃亡ソ連兵への尋問を行ってはいましたが。
    そう考えると、第5話では伊沢が意図的に情報を流し逃亡することに成功していますが、スパイの世界ではそこまで珍しい任務ではないのでしょう。
    しかし、珍しくもない任務に命に係わる危険がつきまとうのが、スパイの世界ではあります。

    >続きを見る 「ジョーカー・ゲームの裏の裏の裏」第6話

    第6話「アジア・エクスプレス」

    第6話「アジア・エクスプレス」には、自国の機密情報を売り渡そうとするソ連領事館2等書記官のモロゾフが登場します。 こうしたソ連側の人物を勧誘し情報を得るような工作は、日本陸軍も実際に行っていました。
    満洲国成立後、長い国境線で向かい合うソ連は、陸軍にとって最大の仮想敵国ですから、対ソ情報活動は重要です。その総本山と言えるハルビン特務機関では、ヒューミント、つまり通信傍受などではなく人的諜報、ソ連内部の人間をスパイとして獲得することにも力を入れていました。
    特に有名なのが、後に最後の中野学校校長となる山本敏少佐が昭和11年に開始した「哈特諜」と呼ばれる工作です。これはロシア内戦時に反革命側の要人だったミハイロフを日本側エージェントとして操縦し、ソ連ハルビン大使館電信員などを買収し情報を流させるというものでした。しかし、途中からソ連側に察知されたらしく、虚偽情報が流れて来るようになったと言います。 これで工作が失敗ということでもなく、その虚偽情報をなぜ日本に流したいのかを分析をすると、逆にソ連側の意図を読む材料になるため、この「哈特諜」は終戦まで続けられました。情報が間違っていても、その間違いを分析して情報にする。裏の裏の裏を読みあう諜報の世界を象徴するような話です。
    そして、祖国を裏切ったモロゾフを殺すために、ストーリーではソ連の防諜組織「スメルシュ」の殺し屋が登場します。実際の「スメルシュ」は、スターリン体制下で警察や諜報機関を統括した国家機関、内務人民委員部(NKVD、のちにKGB)出身であるヴィクトル・セミョーノヴィチ・アバクーモフによって、独ソ戦の最中の1943年4月14日に創設されました(前身組織である国家安全部第四局OO GUGBが組織再編された形ですが)。
    ロシア語で「スパイに死」(Смерть шпионам)の頭文字から名付けられた「スメルシュ」(СМЕРШ)の任務は、最前線でソ連赤軍を督戦し、脱走兵やスパイ、敗北主義者、占領地の不穏分子の摘発の他、捕虜となったドイツ軍や日本軍の高級将校の尋問なども行いました。
    日本陸軍のスパイマスター、陸軍中野学校初代校長であった秋草俊も、ソ連軍に投降後「スメルシュ」の尋問を受けたと言われています。
    つまり、「スメルシュ」は戦闘の最前線で独裁者スターリンの目や手となり、ソ連軍の内部を監視し、最前線でスパイ狩りを行う戦時の独立した防諜組織だったのです。そのため、戦時中の1943年に創設され、戦争が終わった1946年5月4日には廃止という、短い期間しか存在しなかった組織でした。 しかし、これは一部のスパイ小説好きの方が抱く「スメルシュ」のイメージとは、大きく違うのではないでしょうか。 強権ではあっても、数年しか存在しなかった戦時防諜組織「スメルシュ」ですが、実はスパイ小説の世界などでは、戦後も極めて大きな陰謀を張り巡らす秘密組織というイメージがあります。
    この原因の一端は、かの「007」シリーズの作者イアン・フレミングにあるでしょう。
    フレミングは第二次世界大戦中に英海軍情報部(NID)で実際に諜報活動を行った経験を元に、1953年に長編第一作「007 カジノ・ロワイヤル」を書きますが、そこに敵役として「スメルシュ」を登場させたのです。
    すでに廃止されたとは思わず、フレミングは戦時中に聞いた断片的な情報で、「スメルシュ」を西側諸国で暗躍する秘密組織として描いたのだと思います。
    現在でこそ、ソ連崩壊で多くの機密文書が公開され、KGB出身であるプーチンがロシア大統領になり、ソ連時代の諜報機関・防諜機関の再評価が進んだことで「スメルシュ」の研究も進みましたが、当時は冷戦の最中、イギリス人であるフレミングに鉄のカーテンの向こうの「スメルシュ」の詳細が分かる筈はありません。
    やがて、ジェームズ・ボンド人気が高まると、敵役「スメルシュ」のイメージも巨大になっていきました。このため、虚実ないまぜの「スメルシュ」像が、スパイ関連の書籍や小説で多数発表されました。
    個人的には、スパイのストーリーを作るならば、現実の「スメルシュ」ではなく、イアン・フレミングが産み落とした幻の秘密組織「スメルシュ」を描いてみたいですねぇ。
    そちらの方が裏の裏の裏を読みあう「ジョーカー・ゲーム」の世界に相応しいように思いますし。

    >続きを見る 「ジョーカー・ゲームの裏の裏の裏」第7話

    第7話「暗号名ケルベロス」

    第7話「暗号名ケルベロス」は太平洋航路の豪華客船「朱鷺丸」の中でストーリーが進行いたします。
    当時は国際列車や一部の空路はありましたが、海外への渡航手段は船であることが一般的で、特に1900-1940年頃は豪華客船時代と呼ばれるほど、定期航路の絢爛豪華な客船が注目された時代でした。
    これは当時の豪華客船が単純な移動手段というだけでなく、その国家の威信を示すため科学や芸術の粋を集めて建造されていたという側面が関係しています。
    現在でも豪華なクルーズ船はありますが、対外的なプロパガンダと国威発揚を兼ねた、当時の豪華客船と比べることはなかなか難しいように思います。
    なにより、豪華客船は国民の意識につながる政治的な存在だったからです。
    例えば、1929年就航の日本郵船の貨客船「浅間丸」は、その豪華さと性能で「太平洋の女王」と呼ばれるほどの船でした。しかし、その内装は「ルシタニア号」や「クィーン・エリザベス号」なども手掛けたイギリスの家具メーカー「ワーリン・ギロー社」に発注され、艤装品などの多くも欧米からの輸入品であったことから、一部からは「国辱船」であるという論争も生まれたほどです。 当時の一流を追及した結果なのですが、こうした世論に押されて以後の日本の客船は国産材料や日本のデザインを意識した「現代日本様式」が採用されます。この論争などは当時の日本国民が自国の豪華客船をどう見ていたかをよく表していると思います。
    そして、スパイにとっても豪華客船の政治性は無視できないものでした。
    豪華客船が国家の威信を背負った存在であるのですから、乗客が国家の威信を背負って海外に渡航する政治家や外交官、軍人、文化人なども多くなるのは当然です。
    こうした乗客たちの退屈さを紛らわすため、パーティーやデッキゴルフ大会などのイベントが開催されたり事前に乗客名簿が配られるなど、船会社側も乗客同士の交流を促すことが多かったようです(スト―リーでも甘利が配られた乗客名簿でシンシア親子の名前を確認するシーンがありますが)。
    スパイがそうした機会を利用して、船内で要人たちに接触し、情報収集や工作で暗躍しても不思議はありません。
    その上、豪華客船はスパイが収集した情報を運ぶルートとしても有効でした。郵便は検閲され、無線は傍受される可能性がありますが、スパイやその協力者が客船を使って直接情報を持ち運びすれば、安全が完全に保証されるわけではありませんが、確実性は増すでしょう。なにせ国内外の要人が多く乗船しているのですから、警察や防諜機関も簡単に手が出せませんし。

    1941年にFBIによって摘発された「デュケイン・スパイ・リング」と呼ばれる、アメリカのニューヨークを拠点としたドイツ・スパイ網がありました。
    ドイツ国防軍情報部(アプヴェア)のニコラウス・リッター大佐を通じて、ドイツ側のスパイとなった南アフリカ出身のフレデリック・ジュベール・デュケインをリーダーとし、FBIに逮捕されたのが33人という大掛かりなスパイグループです。
    このメンバーの中には、ユナイテッド・ステイツ・ライナー社の客船アメリカ号の乗組員として働くかたわら、スパイが収集した情報や活動資金を運ぶ連絡員として活動するものもおりました。
    当時の客船が豪華さや優雅さの裏で、国際外交や諜報活動の結節点だったことが分かる一例だと思います。
    そして、こうした豪華客船の政治性が、国際情勢に影響を与える事件を引き起こすこともあります。
    ヨーロッパで第二次世界大戦勃発後の1940年1月20日に、房総半島沖の公海で先に紹介した日本の豪華客船「浅間丸」が、イギリス海軍中国艦隊の軽巡洋艦「リヴァプール」に強制的に臨検を受けるという事件が発生します。
    第7話でイギリス海軍が暗号専門家マクラウドを連れ出そうと、「朱鷺丸」に臨検を強行したのと同じような状況ですね。
    この時も「浅間丸」の船長はイギリス側に抗議しました、イギリス海軍士官は戦時国際法を主張し、乗客であったドイツ人の男性21人を戦時捕虜の名目で連行してしまいます。
    世に言う「浅間丸事件」ですが、国家の威信を背負った豪華客船から、強制的にイギリス軍艦がドイツ人乗客を連行したことに日本では反英の機運が助長され、その後ドイツとの同盟が進んだ原因の一つと考えられています。
    こう考えると、国際政治が複雑に絡んだ豪華客船の上で、甘利がD機関のスパイという立場を維持しながら、なんとかギリギリで事態の悪化を防ぐバランサーとして動いたことが分かります。
    ただ、その結果として女の子と犬一匹の責任を負うことになったのは、甘利としては予想外でしょうが。

    >続きを見る 「ジョーカー・ゲームの裏の裏の裏」第8話

    第8話「ダブル・ジョーカー」(前編)

    第8話では、陸軍のエリート「天保銭組」の風戸中佐率いる「風機関」が登場します。「天保銭組」とは、部隊勤務を経験した兵科少尉・中尉が推薦で受験する陸軍高級将校養成学校「陸軍大学校」の卒業生を指す言葉です。
    卒業生を表す「陸軍大学校卒業徽章」が江戸時代の天保通宝に似ていることから名づけられましたが、この「天保銭組」もある種の化け物たちと呼べる存在でした。
    時代などで違いがありますが、陸大受験生は全国から若く優れた兵科将校(憲兵科を除く)が推薦されますが、一週間の筆記・口頭の初審試験でそれを100人に絞り、次の再審試験では十日間にわたって試験官から出される難問で半分の50人に絞られるという、合格率約 1 割と言われる難関を勝ち抜く厳しい競争に晒されます。
    そのため、その卒業生の自負心とエリート意識は化け物並みに強烈で、陸大を卒業していない将校の「無天組」と感情的な対立が発生し、昭和11年に「陸軍大学校卒業徽章」自体が廃止されたほどです。 そうしたエリート軍人の「天保銭組」である風戸中佐ですから、地方人(旧陸軍では軍隊外の一般社会を「地方」と称した)で構成されたD機関を気に入らないのは当然でしょう。
    そもそも、同じ政府内であっても、諜報組織や防諜組織同士の関係は微妙です。お互いの縄張り争いや権限が被る場合は尚更でしょう。
    こうした関係は、国家や時間は関係ないように思います。
    例えば、ソ連を代表する二つの情報機関、赤軍参謀本部情報部(GRU)とNKVD(国家保安委員会、のちKGB)の対立は非常に激しく、海外の大使館などで隣り合うと、敵そっちのけで互いに相手の失態を見つけようとしていたと言います。 アメリカでもCIAとFBIの関係は創設当時から微妙で、近年でもFBIの特別捜査官がアルカイダに関する情報提供をCIAに要請にしたのですが、CIAのビンラディン専従追跡班「アレック・ステーション」はFBIを信用せず情報を秘匿し、結果として両組織の対立が911テロの未然に防ぐ機会を失ったとして問題視されたことなどもありました。
    旧日本陸軍では、諜報活動を行う特務機関と治安を担当する憲兵隊が、現場で衝突することはしばしば起こったようです。
    例えば、中国である特務機関が現地の人間をエージェントにして、抗日組織に対する潜入工作を行っていたのですが、ある日このエージェントと家族が憲兵隊に拘束されてしまいます。慌てた特務機関側が憲兵隊にエージェントの釈放を要求すると、憲兵隊は「抗日組織に接触している」と主張し、それをなかなか受け付けなかったそうです。 「潜入工作なんだから、抗日組織に接触するのは当たり前だ!」と怒った特務機関が、なんとか手をまわして釈放させたらしいのですが、以後エージェントは協力を拒み、工作自体が頓挫したとのこと。特務機関からは憲兵は情報活動を阻害する頭が固い組織に見えたかもしれません。
    反対に当時憲兵だった方の回顧録などを読むと、しばしば「中野学校」卒業生などのスパイ工作に従事する者に対する批判的な文章を目にします。東京憲兵隊特高課長などを歴任した塚本誠は中野学校の教育を「いたずらに諜報、謀略の技術に走り」と評していますし、阿久津中将が言うように、スパイを卑怯な存在と思っていた部分はあるでしょうし、胡散臭く混乱を招く存在と見ていたのかもしれません。
    もちろん、両者は近い領域で仕事をしておりますし、協力関係がきちんと成り立っていた場合も多くあります。実際のスパイ養成機関であった陸軍中野学校は、「天保銭組」である岩畔豪雄中佐、現場たたき上げのスパイ工作の専門家だった秋草俊中佐、理論派の憲兵として名高かった福本亀治中佐によって創設されましたのですから。
    しかし、「躊躇なく殺せ、潔く死ね」を旨とした「風機関」と、「死ぬな、殺すな」の「D機関」では、根本的なイデオロギーが違います。
    立場や縄張り争いなどという次元ではなく、両者は根本的に相いれない関係のように思います。

    >続きを見る 「ジョーカー・ゲームの裏の裏の裏」第9話

    第9話「ダブル・ジョーカー」(後編)

    第9話では、結城中佐率いる「D機関」と風戸中佐率いる「風機関」の対決でストーリーが展開します。
    しかし、もう少しだけ視野を広げてみると、D機関と風機関、そして元英国大使の外交官である白幡樹一郎との三つ巴の駆け引きであることがお分かりになるかと思います。
    すでにお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、この白幡樹一郎のキャラクター設定は、ある実在の人物の経歴と大変よく似ています。戦後復興期に長く政権を維持し、1951年にはサンフランシスコ平和条約で再び日本の独立を達成させた第78-79代内閣総理大臣の吉田茂です。
    吉田は昭和11年から13年まで駐英大使を務めておりましたし、ドイツとの同盟に強く反対し、岳父である牧野伸顕伯爵などと共に陸軍からは「親英米派」と見られていました。 戦時中にも密かに和平工作を画策し、憲兵によって投獄された経験もありました。
    アニメの中で「風機関」は白幡を「ハクスレー」と呼んでいましたが、実際の陸軍及び憲兵隊も和平を目指す吉田を危険視し「ヨハンセン」という符牒で呼び、厳重な監視下に置きました。そして、「D機関」の実井と同じように、大磯にあった吉田邸には実際に中野学校出身のスパイが書生として送り込まれていたのです。
    もちろん、現実の吉田茂は機密である「統帥綱領」を盗読し、イギリス側にその情報を提供するようなことはしないでしょう。しかし、長く国際政治や陸軍との権力争いに揉まれてきた人物ですし、結城中佐と同じように「統帥綱領」を「あんなもの秘密にしてどうする」と判断し、イギリス側と今後のコネクションを作れるならば、外交取引に使うくらいの大胆さと狡猾さはあったとも考えてしまいます。
    結城中佐が同じ諜報組織である「風機関」を歯牙にもかけていない様子であるのに対して、蟄居同然の外交官である白幡を「役に立つ」と評し、むしろ身内のはずの陸軍の干渉を排除する動きを見せるのも気になります。
    これは結城中佐が、現実の吉田茂がそうであったように、白幡に「ピースフィーラー」(Peace feeler)としての能力を感じ取ったからかもしれません。
    「ピースフィーラー」は、直訳すれば「平和を感じる者」ですが、外交の世界では戦時下で和平工作を行う者に対して使用されます。簡単に「和平工作者」と訳してもいいかもしれません。
    「ピースフィーラー」は、戦争と外交の狭間の極めて難しい位置に立たされます。戦争している最中に和平工作を行うのですから、自国の中でも戦争を推進する勢力からは「敗北主義者」や「裏切りもの」と見られ、場合によっては監視や弾圧、命を狙われる危険性もあります。反対に、交渉相手である敵が謀略ではないかと少しでも疑われれば、 工作自体が簡単に失敗してしまいます。
    従って「ピースフィーラー」は、味方となるべき人物をよく見極め、妨害が入らないように細心の注意を払い、用心深く警戒してくる敵と粘り強く交渉を重ねなければなりません。ストーリーの中で、旅館からの電話ですぐに危険を察知し逃げた白幡ですから、「ピースフィーラー」の才能があるのかもしれません。
    これはスパイの才能に通じるものがあります。
    実際「ピースフィーラー」自体が、スパイであることも珍しいことではありません。
    例えば、アメリカ中央情報局CIAの前身組織の一つであり、第二次世界大戦中に発足された諜報機関・戦略情報局OSSのメンバーは各地で枢軸側の人物と接触し、諜報活動だけでなく「ピースフィーラー」としての動きを見せることがありました(それが成功したかどうかはともかく)。
    公表された記録を見ると、OSSスイス・ベルン支局長だったアレン・ウェルシュ・ダレス(のちのCIA長官)は、1941年12月に亡命ドイツ人だったフリードリヒ・ハックを通じて行われたベルリン海軍武官室の藤村義朗中佐らの和平工作や1945年6月にスイス公使の加瀬俊一と公使館附武官の岡本清福少将による和平工作に関与しているとあります。
    戦術や戦略に長じた軍人や外交官も重要ですが、戦争を始める以上、戦争を終わらせる「ピースフィーラー」が絶対に必要となります。情報を集めるスパイが必要なように。
    魔王と呼ばれる結城中佐ならば、今後の日本の将来を見据え、「ピースフィーラー」となりえる白幡を温存しようと考えた可能性もあるのではないでしょうか。ついつい、終戦間近に白幡と結城中佐率いる「D機関」が、他の諜報機関の妨害を避けながら、和平工作を行う!なんてストーリーを空想してしまいます。架空のキャラクターである白幡を、現実の吉田茂と重ねてしまうのは良くないですが、どうか私の妄想ということでご容赦を!

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    第10話「追跡」

    第10話では、新聞記者であり英国秘密諜報部に所属するプライスが、結城中佐の過去を追跡するストーリーとなります。
    スパイが新聞記者の身分で活動することはよくあることです。
    例えば、戦前日本の通信社「同盟通信」記者の身分で活動した中野学校出身のスパイもおりました。イギリスなどでもジャーナリスト、特に「ストリンガー」と呼ばれるフリーランスの記者やカメラマンがスパイ活動に従事することは多々ありましたし、時には名のある作家がスパイとなった例もあります。
    「月と6ペンス」で有名な小説家サムセット・モームもその一人で、第10話の中で有崎晃のイギリスでの後見人となったとされる英国秘密諜報部の立役者マンスフィールド・スミス=カミング海軍大佐の部下ウイリアム・ワイズマンの指示で、革命で揺れ動くロシアでのスパイ活動に従事した経歴を持っています。 (モームはこの時の体験を「アンシェンデン」という小説で描いています)実際、英国秘密諜報部は情報収集のため、様々な場所で様々な人材を獲得しています。
    では、プライスが推理したように、カミング海軍大佐率いる当時の英国秘密諜報部が日本人のスパイを雇うようなことがあったのでしょうか?
    明治以降、イギリスには多くの日本人が留学しておりました。技術者や科学者だけではなく、日本の上流階級の子弟がカレッジに所属し、ケンブリッジやオックスフォード大学で学ぶことは珍しいことではありませんでした。 特に岩倉家はオックスフォード大学のベリオール・カレッジと結びつきが強く、大学の日本人クラブが有力者から後援されていたという話もあります。
    そうした日本人留学生の一人に英国側が目をつけた可能性はあるでしょう。
    加えて、1902年から第一次世界大戦まで日本と英国は「日英同盟」を結んでおりました。当初ロシアに対抗する同盟の側面が強く、日露戦争などでは英国が情報の面で日本をサポートし、1907年の英露協商・日露協約締結でその存在感はやや薄れたものの、両国は諜報面で一定の関係を築いていたと言っていいでしょう。
    第一次世界大戦時にも、ロンドンの日本陸軍の駐在武官に対して、ドイツに関する情報(特に膠州湾租借地のドイツ軍.に関して)を提供した功績で、日本政府は英国陸軍省情報部長(Director of Military Intelligence)ジョージ・マクドノー少将に勲二等旭日重光章を送ったという記録もあります。
    ジョージ・マクドノー少将は、陸軍省情報部長としてカミング海軍大佐率いる英国秘密諜報部を、名目的には統括する立場でした。マクドノー少将とカミング大佐は、ちょうど阿久津中将と結城中佐の関係のように、諜報をめぐる主導権争いを繰り返す間柄でしたが、両者の間で日本との関係を模索する動きがあった可能性はあります。
    こう考えると、イギリスに留学していた同盟国日本の学生に、英国の諜報関係者が目をつけたという話も、それほど荒唐無稽とは言えないような気がします。 将来有望な日本の上流階級の子弟と関係を築き、うまくスパイとして獲得できれば、日本との関係がどう変わろうとも重要な情報源になる可能性が高いのですから。
    カミング大佐は第一次世界大戦中の1915年頃から、独自のスパイ養成プログラムを実施していたと言われています。選び抜かれた人材に4週間の集中した実践的なスパイ訓練を施すというもので、彼自身が講師を務めたこともあったそうです。
    このスパイ養成システムからは、「百の顔を持つ男」の異名を持ちソ連共産党に深く浸透したポール・デユークや、天才的な語学能力を持ち第二次世界大戦では特殊作戦執行部(SOE)の創設に寄与したジョージ・ヒルなどの、イギリス有数のスパイマスターが多数輩出されています。
    こうした未来のスパイマスターたちの中に、日本人が一人混じっているとしたら?
    もちろん、有崎晃がカミング大佐の弟子だったというのもプライスの単なる推理に過ぎません。有崎晃と結城中佐がどういう関係だったかも不明です。
    そもそも、あの寝たきりの人物は本当に有崎晃本人なのでしょうか?
    すべてが結城中佐によってねつ造されているという可能性もあります。
    しかし、結城中佐の鋭い状況判断と卓越した能力を考えると、スパイの歴史の中でも伝説的なカミング大佐の元で若き日の教育を受けていたというのは説得力があります。カミング大佐は交通事故で片足を失っており、木製の義足でしばしば人を騙していたという逸話もあるのですが、どこか結城中佐に通じるところがあります。
    もっとも、こうした妄想を膨らませてしまうことが、結城中佐の術中にはまっている証拠なのかもしれません。

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    第11話「柩」

    第11話「柩」では、ドイツ国内で活動するD機関のスパイを追いかけるドイツ国防軍情報部のヴォルフ大佐の視点でストーリーが展開します。
    そのヴォルフ大佐のセリフにもあったように、実は日本とドイツはお互い敵として認識していた時期が相当にありました。
    第一次世界大戦で日本は連合国側としてドイツに宣戦布告しており、ドイツ帝国の東アジアの拠点であった青島を攻略しております。また、1910年前後からドイツは中華民国と「中独合作」という呼ばれる軍隊の近代化と国防産業育成に関する協力関係を続けており、日本と戦う蒋介石の支援を行っていました。
    しかし、ナチス政権の外交政策の変更によって、1936年に日独防共協定が締結されると、両国の関係は強化されていきます。これによって、日本陸軍のヨーロッパにおける情報活動も変化を見せ、それまで協力関係を重ねてきたポーランドやフィンランドに代わって、ドイツが情報戦のパートナーとなるケースが増えていきます。
    特にソビエトに対する情報活動での提携が進展し、ベルリンに拠点を置いた馬奈木敬信中佐の「馬奈木機関」、それを引き継いだ陸軍中野学校の生みの親の一人である秋草俊大佐の「星機関」などが、 ドイツとの協力の下で白系ロシア人やウクライナ人をエージェントとする対ソビエト工作を実施するようになります。
    1940年に日独伊三国同盟が成立することでこうした動きは最高潮に達しますが、その結果ドイツと日本の間で情報戦が無くなったかというと、そんなことはありません。
    そもそも戦略として軍事同盟を結ぶのであれば、相手国の戦争遂行能力や指導部の意思決定システムなどを十分に調査研究する必要があります。友好国であってもすべての情報を提供してくれる訳はなく、常に情報を収集分析し、両国の関係が変化した場合に備えることが、情報機関の務めと言えます。
    ドイツ側の日本に対する情報活動で有名なものは、航空相であったヘルマン・ゲーリング元帥が航空省内に設置した情報機関「Forschungsamt」(ゲーリング調査局、ゲーリング機関などと呼ばれる)の対日盗聴工作でしょう。
    この機関はドイツ国内の要監視者の電話を盗聴録音することを任務とし、その中でも第四局と呼ばれる部門に、日本の外交官や駐在員の電話を盗聴し翻訳する班が設置されていたようです。当時のベルリン駐在の人々の間では盗聴は公然の秘密だったようで、「日本の留学生が雇われている」という噂もあったとか。
    これに対する日本側のドイツに対する情報活動ですが、1941年(昭和16年)当時にドイツ大使館附武官補佐官であった西久少佐の証言によれば、ナチス首脳部と太いコネクションを持ち、日独伊三国同盟の推進者であったドイツ大使の大島浩(元ドイツ駐在陸軍武官)が友好に反する情報活動には否定的で、 「エゲツない方法で探ることができず、俺の方はお前の秘密には無関心であるという顔をして情報を収集しなければならなかった」(伯林会「大戦中在独陸軍関係者の回想」より)という状況だったようです。
    そこでドイツ軍の実情を探るため、共通の利害を持つフィンランド、ハンガリー、ルーマニアの武官との連携が模索され、それぞれの国の武官がそれぞれの情報を持ち寄って、兵力配置などの割り出しを行い、ドイツの戦争遂行能力の判断材料としたとあります。 これ以外でもエストニア・リトアニア公使館附武官やスウェーデン公使館附武官を歴任した小野寺信大佐(のち少将)は、ポーランド軍の情報将校たちの諜報組織と協力関係を構築しドイツ側の防諜組織の監視を受ける等、同盟国同士の情報戦は深く見えない場所で静かに繰り広げられておりました。
    敵国同士ならば、スパイ活動が発覚しても外交関係がそこまで悪化することはありません。そもそも敵同士なのですから。
    しかし、同盟関係にある国に対してスパイ活動が摘発されれば、外交関係が悪化し、国家戦略に与える影響も大きいでしょう。同盟国に対するスパイ活動は、敵国に潜入するスパイよりも、政治的な難しさが付きまとうと言えます。
    そう考えれば、その難しい任務を三好(真木)に与えたということが、結城中佐が彼の能力をそれだけ信頼していたという証拠でしょう。
    三好もその信頼に応えるように、不測の事態に遭いながらも、自分の痕跡を残さずに正体不明のままに死んでいったのです。

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    第12話「XX ダブル・クロス」

    第12話「XX ダブル・クロス」をご視聴頂きありがとうございます。アニメ「ジョーカー・ゲーム」もこの回を持ちまして、一区切りとさせて頂きます。
    このシリーズの最後を締めくくるストーリーを端的にしますと、「スパイを止める選択」ということになるかと思います。
    過去を捨てて小田切という偽りの名を持つD機関のスパイが、自らが「怪物になれない」ことを悟り、幼いころからの思慕という感情を抱く飛崎弘行という人間に戻るという選択をするのですから。
    現実では、スパイがスパイを止める理由は様々です。任務中に逮捕されて強制的にスパイを止めさせられることもありますし、戦時中にスパイ活動に従事し終戦と共に普通の市民に戻ることもありますし、 CIAなどの情報機関の職員が定年退職でスパイ引退ということもあるでしょう。
    陸軍中野学校の創設者の一人で、日本陸軍きってのスパイマスターと呼べる秋草俊は、関東軍情報部長として敗戦を迎えますが、逃亡を勧める周囲の進言を断ってソ連軍に投降し抑留され、1949年3月22日モスクワから北西160kmにあるウラジミール中央監獄で死亡します。 その生涯のほとんどをソ連との情報戦に費やしていたスパイマスター秋草俊ですから、ソ連側に拘束されれば、自分がどう扱われるかは予測が出来たかと思います。それでもあえて投降したということは、スパイとして生きた自らの人生に、彼なりのけじめを取ったとも考えられます。結城中佐が言うところの「真っ黒な孤独」を受け入れ、自らのスパイの終わりを選択したのかもしれません。
    反対に、凄まじい実績を残しながらスパイを止め、まったく違った第二の人生を歩む者もいます。
    1900年生まれのイギリス海軍軍人だったマックスウェル・ナイトは、1930年頃に防諜機関MI5の正式にメンバーとなり、オックスフォード大学内の平和主義グループを探るためにスパイを行う学生を獲得する工作や、共産党員を寝返らせる工作に従事したとされます。ドイツとの戦争が現実味を帯び始めると、ドイツと接触を持ちそうな英国ファシスト団体に軒並みスパイを潜り込ませるという荒業な工作を遂行したと言いますから、第5話「ロビンソン」に登場するマークス中佐のような存在でしょうか。
    「007」シリーズの作者で、戦時中に情報関係で働いたイアン・フレミングは、007の上司である「M」のキャラクターを数人の実在の人物から作ったと言われていますが、 この時代のマックスウェル・ナイトも、そのモデルの一人であったとされます。その天才的な才能と冷徹さから、イギリス史上でも有数のスパイマスターであったことは間違いないでしょう。
    この稀代のスパイマスターが、戦後も静かに諜報関係を歩み・・・・ということならば、納得できるのですが、人間の一生とは実に複雑で、我々の予想を超えることが時々あります。
    MI5の幹部であった彼は、健康の理由から54年にスパイの道から離れることを決断しますが、その後はなんと動物学の専門家の道を歩み始めるのです。
    実は在職中にも「Young Field Naturalist's Guide」(1952)、「Bird Gardening」 (1954)などの動物学・ナチュラリストの著作を執筆しており、引退後も「Reptiles in Britain」 (1965)や「How to Keep an Elephant」 (1967)、「How to Keep a Gorilla」 (1968) 「Be a Nature Detective」 (1968)など、生涯で34冊の本を出版し、人気ナチュラリストとして多くの雑誌に動物の記事を書くようになります。
    1968年にマックスウェル・ナイトは心不全で死亡しますが、BBCラジオの人気動物番組にも出演しており、彼の本や番組で動物に興味を持った多くの者がその死を悼みました。
    秋草俊とマックスウェル・ナイトは、結城中佐並みのスパイマスターと言えると思いますが、彼ら二人の「スパイを止める選択」は実に対照的です。
    「真っ黒な孤独」を受け入れた怪物として静かに世を去るか、孤独の道を離れ多くの人に慕われる世界に戻るか?
    D機関員であった小田切はスパイを止め、一軍人である飛崎弘行として生きることを選択しました。
    では、他のD機関員たちはどうでしょうか?
    これは誰にも分かりません。
    願わくば、迫りくる戦争を生き延び、彼ら自身の意思で「スパイを止める選択」が行えるようになって欲しいものです。

    キャストコメント&色紙を公開!

    • 結城役:堀内賢雄

      ―― 作品への印象を教えてください。

      日本では珍しいスパイもので、スパイを養成しているという発想もすごくおもしろいですよね。
      ちょうど原作を読もうと思っていた矢先にいただいたお話だったので、うれしかったです。
      ストーリーはもちろん雰囲気も良くて、観ていただければ「このアニメ、ちょっと違うぞ!」と
      感じてもらえると思います。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      結城の「死ぬな、殺すな」という考えはとても興味深いですよね。ただ演じるのは大変でした(笑)。
      セリフは長いし、感情をすごく抑えた芝居をしなくてはいけなかったので。
      この作品はセリフや話し方、ひとつひとつにリアリティがあるので、じっくり観ていただければと思います。

      ―― 「ジョーカー・ゲーム」にかける意気込みをお願いします。

      柳広司先生のヒット作品に出演できて光栄です。
      日本の作品では珍しいスパイ物。
      さらにテンションがあがりました。

      ―― 好きなシーンを教えて下さい。

      ・結城に勧誘を受ける佐久間がモノローグでつぶやく場面。
      ・軍人として育て上げられた佐久間の深いセリフ。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      ついに4月に放送開始です。絵や音楽、テンポ感なども他とは一線を画す作品となっております。
      自分自身も一所懸命芸を磨いて、結城という役を精一杯演じさせていただき
      、みなさんに楽しんでもらえるものをお届けできるように頑張りますので、ぜひ応援してください。

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • 佐久間中尉役:関 智一

      ―― 作品への印象を教えてください。

      僕はもともと、日本の時代劇とか戦中・戦後などの少し古い時代の作品が好きなので、ストーリーや時代背景などもおもしろいなと思いました。敵国と戦うために秘密裏にスパイを養成していたという設定も「どんな組織なんだろう?」と妄想できたりして、純粋に楽しかったです。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      佐久間は昭和初期の典型的な日本男子というイメージですね。実直で男気があってとても軍人らしくて。
      僕としてはこの時代を描いた作品が好きなので、こういう感じだよなというのもイメージしやすく、
      とても演じやすいキャラクターでした。

      ―― 「ジョーカー・ゲーム」にかける意気込みをお願いします。

      全身全霊をかけて挑みます!!

      ―― 好きなシーンを教えて下さい。

      第2話ラストのあの人と2人で歩いてる場面です。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      (子供向け番組のお兄さんふうに)みんなが大好きな、あの『ジョーカー・ゲーム』がついにアニメ化するよ!
      プロのスパイ集団・D機関のメンバーたちが世界中のいろんな国で八面六臂の大活躍!!
      4月からの放送をお楽しみに!

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • 三好役:下野 紘

      ―― 作品への印象を教えてください。

      登場人物たちの思惑などが全て明らかにならず、逆に観ていただいたみなさんそれぞれが考察したり想像をかき立てられるところが、この作品の魅力だと思います。
      収録現場もすごくメリハリがあって、その雰囲気もとてもおもしろかったです。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      今までたくさんの役を演じさせて頂きましたが、三好のようなクールな役は僕の中では本当に珍しいです。
      しゃべり口調もとても落ち着いていて、演じるのはとても難しかったのですがその分やりがいを感じました。
      ぜひ、聞いていただけると嬉しいです。

      ―― 「ジョーカー・ゲーム」にかける意気込みをお願いします。

      こんなに有名で、シリアスな作品に携われるのは、本当に嬉しいですし、ボク自身楽しみです!
      ボクの演じる三好の活躍、楽しみにしていてください!

      ―― 好きなシーンを教えて下さい。

      三好的には、ジョーカー・ゲームの説明をしてるシーンが好きですね・・・すごく喋ってるし。(笑)
      個人的には、佐久間や結城中佐、武藤大佐の舌戦や話し合いが好きですし、 同じ声優としてすごい勉強になりました。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      本当に男くさい作品であると共に、ものすごい心理戦もあり、大人の方にも楽しんでいただけるアニメです。
      ぜひたくさんの方に観ていただいて、いろいろな想像を膨らませたり、
      独特の雰囲気を楽しんでいただけたらと思います。
      どうぞよろしくお願いします。

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • 波多野役:梶 裕貴

      ―― 作品への印象を教えてください。

      すごく雰囲気のある作品だなと感じました。深いお話ながらも、短編で紡がれていく作品なので観やすい作品になっていると思います。難しいセリフや言葉がたくさんあるので大変でしたが、登場人物が少ないのもありで、空気感やお芝居のキャッチボールを楽しみながら演じることが出来ました。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      僕が演じさせていただいた波多野という男は、スパイのプロフェッショナルで、本当にすごい超人のような人物です。
      そんな中で、どこかのらりくらりとしているところからは彼らしさを感じましたし、強気な態度からはまだ若い面もある人なのかなという印象を受けました。…正直、言葉では説明しにくいキャラクター・ドラマだったので、ぜひご自身の目と耳で確かめてみてください(笑)。

      ―― 「ジョーカー・ゲーム」にかける意気込みをお願いします。

      まるで実写映画のような、リアルで素敵な空気感のある作品です。
      実際に収録をしていても、役者として、とても気持ちよくお芝居をすることが出来ました。
      緻密な設定や繊細な描写も魅力的な作品だと思いますが、難しいことを考えずに観ても十分に楽しんでいただける作品だと思います。ぜひご覧ください。

      ―― 好きなシーンを教えて下さい。

      波多野のエピソードは少々変化球なので、実はお話しづらい所もあるのですが…。(笑)
      挙げるとすれば、終盤、名前を名乗るシーンです。
      これぞ本作品…といったやりとりを感じていただけるかなと思います。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      まるで実写映画のような雰囲気の作品で、演じていて、僕自身もその世界に入ったような感覚に陥りました。
      そんなリアルな現場の空気感が、お芝居をしていてすごく気持ちよかったです。
      難しい言葉や設定なども登場しますが、十分シンプルに楽しめる作品だとも思いますので、
      たくさんの方にご覧いただけたらうれしいです。よろしくお願いします。

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • 神永役:木村良平

      ―― 作品への印象を教えてください。

      とても渋くて格好良くて、まるで洋画のような作品だなと思いました。
      僕はのちに伊沢役として出演させていただいているのですが、セリフもたくさんあって、なによりキャスト全員そろって収録できたのがすごく楽しかったし、うれしかったです。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      監督からの指示もあって少し軽めな感じのしゃべり方ですが、内面は全く計り知れないキャラクターですね。
      だけどD機関のトップである結城のことはすごく尊敬していて、彼に身を委ねているんだろうなとは思いました。

      ―― 「ジョーカー・ゲーム」にかける意気込みをお願いします。

      収録してみて、非常に魅力的な作品だと感じられたので、早くみなさんにお届けしたいです。

      ―― 好きなシーンを教えて下さい。

      伊沢が結城の意図に気づくところ。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      第1話で少し登場する神永ですが、のちに伊沢として大活躍する話数がやってきます。映像やお話もとってもとっても美しく仕上がっていますし、キャストのみなさんの演技も大変素晴らしいので、自信をもって「観ていただきたい!」と言える作品です。ぜひぜひ、ご覧にください!

      ※ 木村良平さん演じる「神永」は、のちのエピソードでは 「伊沢和夫」の名で諜報活動を行っています。

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • 田崎役:櫻井孝宏

      ―― 作品への印象を教えてください。

      シリアスでクールな作品でした。
      重厚なストーリーで見ごたえ十分です。
      専門的な知識がなくても楽しめる、正にエンターテイメントな一作ですね。
      言葉で表すのが難しいのですが、とても映画チックでスタイリッシュでおもしろいです!

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      一見社交的ですが、それはスムーズに目的を達成するために作られた人物像で、本来の彼はもっと色がないです。
      第1話では田崎として、のちのエピソードでは瀬戸として登場する彼をみなさんは目撃します。
      スパイの仕事を覗き見られる、構造的なおもしろさが魅力ですね。

      ―― 「ジョーカー・ゲーム」にかける意気込みをお願いします。

      難しい題材ですが、映画チックなエンターテイメント性の高い作品でとても魅力的だと思いました。
      雰囲気と質感を損なわないよう、一生懸命頑張ります。

      ―― 好きなシーンを教えて下さい。

      子供たちとのやりとりと、その裏にある計算。
      命をかけた駆け引きがクールでカッコ良かったです。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      この世の中には決して交わることのない人達がいて、
      その人たちは毎日が死と隣り合わせ、という異常な世界に生きている。
      信じがたい世界が存在しているということを頭の片隅に置きながら、作品にひたっていただけたらうれしいです。
      洗練された映像世界をぜひお楽しみください。

      ※ 櫻井孝宏さん演じる「田崎」は、のちのエピソードでは 「瀬戸」の名で諜報活動を行っています。

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • 福本役:中井和哉

      ―― 作品への印象を教えてください。

      とても濃密な作品で、小説の文章がギュッと凝縮された塊を見せられている感じがしました。
      時代背景も実際にあった過去が舞台ですが、あまり授業では習わない時代なので、ひょっとしてこんなことが本当にあったのかなという気がして。フィクションなんですが、不思議なリアリティがある物語だと思いました。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      音響監督の岩浪(美和)さんから「ネズミっぽく」というディレクションがあって、まさしくその通りの人物だなと。
      ただベースには「天然で寡黙な福本」というキャラクターがいますので、そんな彼が別人格を演じることで、余計に分かり易い小物になっているのかな、と解釈しています。

      ―― 「ジョーカー・ゲーム」にかける意気込みをお願いします。

      どうやら出番は多くないと伺いました。
      しっかり存在感を残せるように、謎めいた男ですが地道に取り組みたいと思います。

      ―― 好きなシーンを教えて下さい。

      意外な人物によって物語の幕が閉じられる第4話。
      その時に発する一言とか涙がとても印象的で、正に魔都での出来事だったと思わせます。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      絵やセリフなど、すごくこだわっていて、妥協を廃した作り方をしているなと台本からも強く感じました。
      僕もまだ完成した映像を観ていないので、放送がとても待ち遠しいです。素晴らしい作品になっていると思うので、
      みなさんにもじっくり楽しんでいただけていたら幸せです。

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • アラン・レルニエ役:檜山修之

      ―― 作品への印象を教えてください。

      アニメーション作品なのですが、まるで洋画のスパイものの吹き替えをやっているようでした。台本を読んだときから感じていましたが、実際に演じてみてさらに強く感じましたね。普段出演する作品とはちょっと違う不思議な感覚がしておもしろかったです。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      アランという、第3話に登場するレジスタンスのリーダーを演じたのですが、彼みたいな若者は当時、現実にいたんだろうなって思うんです。愛国心に燃えるごく普通の青年で、D機関のメンバーのような超人ではないのですが、すごく人間味があってとても気に入っています。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      すごく骨太な作品です。第二次世界大戦中が舞台なので、歴史好きの僕としては一挙両得な作品でした(笑)。複雑な人間模様や心理が描かれていて、観れば観るほどこの世界観に浸れますので、期待していただいて間違いありません。
      僕も珍しい役を演じられて、とても楽しかったです。ぜひ観てください!

    • 及川大尉役:藤原啓治

      ―― 作品への印象を教えてください。

      正義感だけではなく、嫉妬や怒り、復讐心も描いていて、リアルな物語だなと思いました。僕の登場する話数は上海が舞台なのですが、元々興味がある街で、作品にすごくはまる場所だなと思います。心理戦や推理的な要素もおもしろいので、そちらも楽しんでいただけたらうれしいですね。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      見た目は少しナンパな感じがしますが、監督たちから「軍人らしさを出してほしい」という指示もありましたし、とてもまじめな部分をもっているキャラクターです。シリアスな作品なので、あまり過剰な表現は避けてリアリティのあるお芝居を意識しながら演じました。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      完成した映像を観るのがすごく楽しみです。特にダンスホールのシーンがあるので、どんな音楽がつくのかワクワクしています。じんわりと汗ばむような緊迫感や人間味溢れるドラマを味わってもらえたらうれしいですね。この作品ならではの雰囲気や魅力がたくさんありますので、存分に楽しんでください。

    • マークス中佐役:大塚芳忠

      ―― 作品への印象を教えてください。

      僕も30年ほど声優の仕事をしていますが、アニメでこんなに渋い諜報ものやスパイものに出演するのは初めてかもしれません。セリフのひとつひとつがハードボイルドそのもので、こういう作品がもっと作られれば僕の出番も増えるのにな、と思いました(笑)。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      冷血で無表情、感情を表に出さない男ですね。
      静かにぼそっとしたしゃべり方なので、大げさな表現よりも逆に怖さがある気がします。
      収録の日にすこし風邪気味だったのですが、それがかえって雰囲気が出て良かったのかもしれません(笑)。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      本当にあった歴史が舞台で、昔の軍隊がどんなことをしていたのか、戦争の裏でなにをしていたのかなどが見事にエンターテイメント化されていて、実にリアルでわくわくするような作品になっています。
      特に若い人に観ていただき、じっくりと味わっていただければ良いなと思います。

    • 甘利役:森川智之

      ―― 作品への印象を教えてください。

      大人向けのドラマだなと思います。人間の感情の流れに合わせたテンポ感で会話をするのがとても楽しかったですね。
      その会話もすべてを語らず「観てる側で察してください」という雰囲気があって、そこがひとつの魅力だなと。最近ではなかなかない空気感の作品だなと思いました。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      とても演じやすい青年のキャラクターでした。D機関のメンバーは本当に様々な能力を兼ね備えているので、甘利が一番得意としていることはなんなのかを知りたいですね。あと、僕が演じる内海のエピソードは今後がとても気になるエンディングだったので、彼がこれからどうなっていくのかすごく興味があります。

      ――「ジョーカー・ゲーム」にかける意気込みをお願いします。

      とても注目されている人気作品なので、恥ずかしくない深みのある演技をしたいですね。
      もちろんD機関の諜報員としてですよ。

      ―― 好きなシーンを教えて下さい。

      スパイもので全編船上という話です。もうそれだけでワクワクしますよね。
      素敵な女性に、動物?子供?色々と登場しますが、お楽しみに取っておきましょうか。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      上質な大人の会話劇を楽しめるアニメーションがスタートします。
      どの話数も豪華声優陣が出演していて“良い声祭り”(笑)ですし、映像もハイクオリティなアニメーションとなっていますので、楽しみにしていただけるとうれしいです。

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • 実井役:福山 潤

      ―― 作品への印象を教えてください。

      それぞれの思惑や感情を秘めたセリフが多くて、台本からもいぶし銀を感じる作品という印象です。
      でも、説明が多いわけではないけれど決して難解ではなく、セリフや映像からきちんとキャラクター達の状況が理解できるし、爽快感もあっておもしろい作品だと思いました。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      僕が演じている森島は、あるところへ潜伏しているキャラクターです。でも彼は変装の名手と聞いているので、アニメで描かれる任務だけでなく、たくさんの仕事を同時進行でこなすようなすごいスパイなのではと想像しています。
      あと森島は置かれた状況に応じて態度が変わるのですが、僕としては演じ分けたというよりもお話の構成に後押ししてもらった感じですね。

      ――「ジョーカー・ゲーム」にかける意気込みをお願いします。

      「渋い」と言っていい題材と現場を味わえる作品ですので、台詞一つ一つを楽しもう!と考えています。

      ―― 好きなシーンを教えて下さい。

      「親のやったことなんですー!!」
      と、土下座するシーンは好物でした(笑)

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      多分、アニメ好きの方でしたらキャストの一番手に(堀内)賢雄さんのお名前があるだけで興味をそそられると思いますが、さらに多くの素晴らしい声優陣がそろっています。僕も共演できてうれしかったです。でもこの作品に触れていただければ、声優だけでなくフィルム自体にも引き込む力があるとわかるはずなので、まずは肩肘張らずに観ていただければと思います。よろしくお願いします。

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • ジェフリー・モーガン役:田中秀幸

      ―― 作品への印象を教えてください。

      本当に自然な形で会話が進んでいく、とても演じやすくおもしろい作品だと思いました。
      ストーリーも各話1エピソードなので30分の中に内容がギュッとつまっていて。
      あと、アニメで描かれていないところを、観ている側が想像力を膨らませて楽しめるのが一番のポイントだと思います。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      モーガンはとてもわかりやすいキャラクターだなという印象です。ちょっと脇の甘いところもあったりもして(笑)。
      先ほどの観ている側が想像力を膨らませられるという話にも繋がるのですが、彼の目的やアニメでは描ききれいていないモーガンのバックボーンもとても気になります。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      本当に素敵な作品に出させていただけて光栄です。絶対にみなさんの期待を裏切らない、必ず楽しんでいただけるアニメーションになっていると思いますので、ぜひご覧ください。

    • 蒲生次郎役:津田健次郎

      ―― 作品への印象を教えてください。

      元々原作を読んでいて、世界観も格好良いし、ストーリーもおもしろい作品だと思っていました。
      全体を通して灰色と言いますか、どこかザラついている雰囲気があって、僕はそういう空気感がとても好きなのでとても惹かれる作品ですね。1話を通しずっと静かなのですが、その中で物語が展開するのもこの作品のおもしろさなんだと思います。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      とても“柔らかい人”という印象があります。でも、そんな雰囲気を武器に相手の懐に潜り込んでいろいろと探っている姿をみると、逆にその部分がすごく怖いなと思いました。あと、話している相手によって態度を変える人物だと思ったので、そこも意識して演じています。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      非常に特殊な世界で、独特の空気感をもつオリジナリティあふれた作品になっていると思います。
      ぜひ観て応援していただけたら、とても嬉しいです。楽しみにしていてください。

      ―― ご自身が演じたキャラクターについて、一筆お願いします!

    • アーネスト・グラハム役:飯塚昭三

      ―― 作品への印象を教えてください。

      今までアニメであまり描かれていないジャンルだから、ある意味で最先端に立っている作品だという気がします。
      登場人物たちの関係性も複雑に入り組んでいて、絵やセリフもおもしろいので、この作品をきっかけに同じようなテイストの作品が増えてくるかもしれないと思いました。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      グラハムは特になにか秀でている人物ではないのですが、野心家なところも多少ある、ちょっとたぬきなおっちゃんですね。でも、あまり色をつけすぎた濃いキャラクターだとこの作品にはあわないと思ったので、どちらかというと陰でコソコソしている感じを意識して演じました。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      自分に関係のない遠い世界の話のようで、実はあなたの身近な存在でもあると思います。ただアニメ作品として観るのではなく、とにかく彼らの生き方や考え方など、なにか発見してもらえたらうれしいですね。そして今現在でも世界中で暗躍し続けているスパイという存在をじろりと睨みつけてほしいなと思います。

    • 風戸中佐役:黒田崇矢

      ―― 作品への印象を教えてください。

      台本を読んだときから、なかなか無い大人っぽいアニメだなと思って、収録が楽しみでした。
      実は2015年に戦後70年ということでひめゆりの塔などを訪れたんです。そのときに感じた戦争の暗い部分や空気感を、作品の方向性などからも感じて、しっかりとしたテーマをもったアニメになっているのではと思います。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      冷静沈着で賢くて腕もたつ、まるで機械のような男です。戦時中なので当たり前なのでしょうが、相手の弱みを調べあげて将棋の駒のように使う知能犯のような部分もあり、多分武力にも秀でている人物ですね。演じる上で一番気をつけたところは、いかに感情を腹にもって表に出さず、淡々としゃべるかです。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      自分が出演した話数だけでもとてもおもしろいストーリーだったので、どのエピソードもきっと楽しめると思います。
      観るたびにどんどんこの作品の世界観に惹きこまれるはずなので、みなさんもぜひ、はまっちゃってください。
      自分も第1話から全部観ます!

    • 小田切役:細谷佳正

      ―― 作品への印象を教えてください。

      オーディションで頂いた原作資料を少し読ませて頂いて、とても重厚な雰囲気がある作品だったので、これは本格的なアニメ作品になるんじゃないかと感じたのが第一印象です。
      大正とか昭和とか、情緒ある雰囲気が好きなので、早く小田切の出番が来ないかなと思っていました。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      小田切は人生に絶望しているときに結城にスカウトされるのですが、実は必死に自分の心を殺して、D機関に染まるよう努めてきた人なんじゃないかなと思います。キャラクターの方向性や演技については、特に指示や説明はなく僕に任せていただけたので、考えていたとおりに演じさせてもらいました。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      ひとことで言うと「人が再生していくお話」だと思います。どんなふうに感じるかは本当に人それぞれなので、個々になにかを感じていただけたらうれしいです。あと、第1話はあまり喋っていないですが、今回は小田切もたくさんしゃべりますので(笑)、どうぞよろしくお願いします。

    • アーロン・プライス役:宮本 充

      ―― 作品への印象を教えてください。

      とても格好良い作品だなと思いました。セリフもハードボイルド小説にありそうで、おしゃれですよね。それに背景やキャラクターの表情など細部までこだわりがつまっていて、素晴らしいなと感じました。実はたまたま僕に馴染みのある場所がアニメに出てきたのですが、昭和の風景に歴史を感じましたし、感慨深かったです。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      D機関の人達と違って、完璧というよりもちょっと出来の良くないスパイという感じです(笑)。
      でも妻をとても愛していたり、すごく人間味にあふれていて、感情が揺れ動いているところはやりがいもありましたし、演じていて楽しかったですね。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      他のお話だとD機関のメンバーが世界を股にかけて、非常にしっかりとお仕事をされていると思いますが、第10話は僕が演じるひとりのスパイの苦悩が描かれています。でもこのエピソードもとてもおもしろいですし、心が温まるようなストーリーです。僕もとっても好きな素敵なお話なので、ぜひご期待ください。

    • ヴォルフ大佐役:銀河万丈

      ―― 作品への印象を教えてください。

      キャラクターも雰囲気も全体的に大人っぽいテイストの作品という印象です。舞台も戦争という個人ではどうしようもないものが動き始めている時代で、でもそういう背景というのはドラマをやる上では素晴らしく、おもしろくなる要素をいっぱいもっていて。僕はこういうにおいがする作品は好きですね。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      自分の頭脳を信じていて、人間性や感情を入れ込まず、極めて理詰めで考えるような鋭利な冷たさを感じました。それに相手をジロッと睨むだけですくませるような怖さもあって。でも決して自分から「こわいだろ!」とやるのではなく、まわりのリアクションで怖さが見えてくるような人物です。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      ご覧になっているみなさんにとっては非日常な世界だと思います。ですがそんな中で人間性の極限や、逆に人間らしさを排除されたキャラクターやストーリーが描かれている作品です。なかなか現実では体験できない事柄の連続だと思うので、むしろそういう部分を楽しんでいただけたらと思います。

    • バウアー中尉役:川島得愛

      ―― 作品への印象を教えてください。

      戦争が背景のお話だけど、決してドンパチするという物語ではなくスパイ対スパイの心理戦を描いている作品だなと思いました。個人的な話になりますが、去年(2015年)イギリスから見たドイツ軍を描いた番組に参加したんです。僕が出演する第11話もドイツが舞台なので、近しいタイミングで違う視点から当時のドイツを見ることができたのがおもしろかったです。

      ―― ご自身が演じるキャラクターについて教えてください。

      すごく忠誠心がある人物だなと思います。銀河(万丈)さんが演じるヴォルフ大佐の部下なのですが、彼に対して恐れはあるけれども尊敬しているということがとても感じられました。
      ヴォルフ大佐もヨハンによく司令を出していたので、他の部下達よりは距離感が近い人物なのかなと思います。

      ―― 放送を待っている皆さまへのメッセージをお願いします。

      毎話いろんな魅力的なキャラクターと、おもしろいエピソードが描かれていると思います。
      アニメーション版『ジョーカー・ゲーム』をぜひ楽しんでいただければうれしいです。

    身長対比表

    美術ボード

    • 大東亞文化協會前の通り(月夜)

    • 結城の執務室(夕方)

    • 大東亞文化協會の廊下

    • 参謀本部 武藤大佐の執務室(夜)

    ティザービジュアル